情報処理学会・優秀教育賞およびJIP特選論文に選定されて

掛下 哲郎(知能情報システム学専攻)
平成25年度佐賀大学理工学部広報ScienTechより転載
2014年9月発行

筆者は情報処理学会2012年度優秀教育賞を授与された。 この賞は毎年1名程度が表彰されている。 表彰状の文言を引用すると、「情報専門教育における質保証に関する活動、特に情報系専門教育の実践と認定関連活動、および、情報系専門職大学院の認証評価に関する活動に貢献し、その功績は優秀教育賞に値する」との評価を頂いた。受賞対象となった取り組みについては文献[1-3]でより詳しく解説しているが、以下に概要を紹介する。

  1. 知能情報システム学科における情報専門教育、学生に対する研究指導、教育におけるIT利活用、JABEE認定プログラムの立ち上げ・教育改善の推進に尽力した。
  2. 情報分野におけるJABEE認定に対して、審査員、審査長、分野別審査委員会委員、基準委員会委員、審査員研修講師等の立場で貢献した。
  3. 情報処理学会誌の特集「大学教育の質保証」(2012年7月号)を企画・編集するなど、情報教育に関する活動の広報に貢献した。
  4. IT専門職大学院等を対象とした専門別認証評価の仕組みを中心となって構築し、文部科学省による認可を得る際にも貢献した。
また、筆者らが執筆した論文[4]が情報処理学会英文論文誌(JIP)編集委員会より特選論文に選定された。 特選論文は極めて優れた研究成果が発表されており、また多くの研究者が参照すべき論文として、JIPに採録された論文から上位10%を目安に選考されている。 筆者らの論文では、情報専門教育のためのカリキュラム標準として情報処理学会が発表しているJ07と情報処理技術者試験の関係を定量的に分析した。 J07はCS(Computer Science)、CE(Computer Engineering)、SE(Software Engineering)、IS(Information Systems)、IT(Information Technology)の5領域に求められる学習成果を定義している。 大学の情報専門学科は、5領域のうちいずれか1つを教育することが期待されているが(例えば、知能情報システム学科はCS主体)、各領域は異なるコミュニティが策定しているため、領域間の関連は必ずしも明確でない。 本論文では、上記の5領域と情報処理技術者試験の各試験区分が求める能力の相互関係を定量的に分析した。 こうして明確化された相互関係は、学生、教員、カリキュラム策定者、産業界を含む社会の様々なステークホルダーにとって大きな意義がある。

受賞の対象となった教育研究活動を推進する際には、学内外の様々な方にご協力頂いた。ここに謝意を表する。

参考文献

  1. 掛下、“情報専門教育における質保証に関する活動―2012年度優秀教育賞を受賞して―”、情報処理学会誌、Vol. 54、No. 10、pp. 1080-1083、2013.
  2. 掛下、松前、“佐賀大学JABEE認定プログラムの取り組み‐系統的な教育プログラム構築と教員間の連携促進―”、情報処理学会誌、Vol. 53、No. 7、pp. 678-681、2012.
  3. 掛下、筧、阿草、“産業技術系専門職大学院の認証評価―大学評価制度はどうあるべきか?―”、情報処理学会誌、Vol. 52、No. 11、pp. 1442-1446、2011.
  4. T. Kakeshita, M. Ohtsuki, “Requirement analysis of computing curriculum standard J07 and Japan Information Technology Engineers Examination using ICT common body of knowledge”, Journal of Information Processing, Vol. 22, No. 1, pp. 1-17, Jan. 2014.